「宇宙飛行士」になりたい。
一定数の人はこんな夢を持っていた時期もあったかもしれません。
私も高校生くらいの頃までは、漠然と宇宙飛行士になりたいなと思っていました。
そこで最初に疑問に思ったのが、「宇宙飛行士になるためにはどの大学に行けばいいのだろうか? どの専門分野を学べばいいのだろうか?」ということでした。
ということで、今回の記事では「宇宙飛行士になるには、どの大学でどのような分野を学ぶべきか」についてみていきます。
宇宙飛行士選抜の学力条件
宇宙飛行士になるためには、宇宙飛行士選抜試験を受けて合格する必要があります。
宇宙飛行士選抜試験には募集要項があり、学力に関する条件として以下のように書かれています。
・大学(自然科学系※)卒業以上であること。
※)理学部、工学部、医学部、歯学部、薬学部、農学部等
・自然科学系分野における研究、設計、開発、製造、運用等に3年以上の実務経験(平成20年6月20日現在)を有すること。
(なお、修士号取得者は1年、博士号取得者は3年の実務経験とみなします。)
・宇宙飛行士としての訓練活動、幅広い分野の宇宙飛行活動等に円滑かつ柔軟に対応できる能力(科学知識、技術等)を有すること。
これを見る限り、現状では少なくとも理系の学部に進学しないと宇宙飛行士にはなれないようですね。
また、単に理工学系の学部を卒業して、いきなり宇宙飛行士試験を受けれるというわけではなく、自然科学系分野における業務経験が必要なようですね。
宇宙飛行士は専門知識はもちろんですが、業務におけるチームワークなども重要なので、業務経験は必須条件ですね。
また、宇宙飛行士選抜試験では英語試験もあります。
募集要項には英語資格の条件は明記されていませんが、英検1級レベルが求められるようですよ。
これまでの宇宙飛行士の出身大学と専門分野
では、実際に今までの日本の宇宙飛行士の方はどのような大学を卒業し、どのような専門分野を専攻してきたのでしょうか。
簡単にですが、2020年現在の日本の宇宙飛行士並びに元宇宙飛行士の方の情報をまとめてみました。
まず、出身大学を見ると、やはり東京大学をはじめ国立大学が多いなという印象です。
宇宙分野は1組織だけで行うには限界があるので、国からの補助がある国立大学のほうが研究施設、研究費用、人脈ともに有利だということが言えると思います。
(宇宙飛行士だけではなく、科学系の研究では国立のほうが有利となるケースが多いです。)
次に、専攻を見てみましょう。
やはり、工学部の宇宙工学や機械工学が多いのが一目瞭然ですね。
これまでの宇宙飛行士の役割としては、宇宙船や国際宇宙ステーション(ISS)内の機器の操作など、機器を使うものが多いため、機械系を専攻にしている人がなりやすいというのはうなづけます。
しかし、だからと言って大学で宇宙工学を学んだ人だけが宇宙飛行士になれるのかというとそういうわけでもありません。
上の表をみると工学系には勝てませんが、医学、化学を専攻にしていた方もいます。
これらの分野は薬品開発や医療技術の開発という点で、実社会への貢献が大きい分野です。
最近では、金井宣茂宇宙飛行士がISSでの長期滞在ミッションにおいて、「 健康長寿のヒントは宇宙にある。 」をテーマに、生体防御遺伝子(Nrf2)を持っているマウスともっていないマウスを長期宇宙環境で飼育し、生体防御遺伝子が宇宙ストレスへの耐性を持つかどうかを実験していました。
もちろんこれらの研究結果は来る月・火星探査や移住計画にも応用されるでしょうが、それだけではなく地上の高齢化・高ストレス社会による老化を防ぐうえでも効果が期待されています。
詳しい研究結果については、
JAXAのホームページをご覧ください。
このように最近は、宇宙機を操作したり、メンテナンスするという観点だけではなく、宇宙空間という特殊環境を利用してどのように人間社会に生かすかという点で、工学系以外の方も宇宙飛行士になるチャンスが増えてくるのかなと思います。
宇宙飛行士に有利になる専門分野
航空工学、機械工学
前章で書いた通り、宇宙飛行士になるうえで最も直接的に役立つ専門分野は航空工学、機械工学だと思います。
宇宙空間で宇宙飛行士の身を守ってくれる宇宙船やISSの構造がどのようになっているのか、緊急事態どのように操作すればいいのかなどは航空工学、機械工学の分野が最も役立つでしょう。(もちろんほかの分野出身の方も訓練などでそういった知識を習得するのでしょうけどね)
医学
古くから、宇宙空間という特殊環境での実験や薬品開発の重要性が指摘されています。
皆さん大好き「宇宙兄弟」でも、伊藤せりか宇宙飛行士がISSでにおいて、ALS(筋萎縮性側索硬化症)治療薬を開発するため、純度の高いタンパク質の結晶化実験を行ってるシーンがありました。
このように、地上では実現が難しい環境での医学、薬学における研究開発は貴重であり、この分野の宇宙飛行士も増えてきています。
生物学
日本の宇宙飛行士ではこの分野を専攻にしている方はいませんが、海外に目を転じると生物、植物学を専攻にしている方もいます。
(この分野と医学は切っても切れぬ関係がありますが…)
「 宇宙における生命 」というのは、人類が太古の昔から疑問に思ってきた根本的な課題でした。
そういった意味で、現在、宇宙×生物学は注目度の高い分野だと思います。
現実問題としては、「宇宙における生命」に対する疑問を答えるための研究を宇宙飛行士はISSで行っているわけではありません。(間接的にはかかわってくるかもしれませんが…)
現状、宇宙飛行士の方がISSで行っている生物系の実験としては、例えば以下のようなものがあります。
・微小重力環境における高等植物の生活環
・宇宙空間における骨代謝制御 etc…
このように、現在は宇宙空間における人間や地球上生命への影響評価を中心にデータを収集しているという段階です。
そのほかにも生物学に近しい学部として、植物学があります。
今後の月火星移住の際、作物の地産地消は大きな課題です。
また、宇宙での植物や食物の栽培が可能になれば、その技術から地球の農業にフィードバックできる部分が見つかるかもしれません。
そういった意味で、今後需要がある分野かもしれません。
皆さん見たかわかりませんが、「オデッセイ」という宇宙関係者からはかなり評判の良かった映画がありましたが、あの映画の主人公であるワトニーは植物学者でしたね。
火星でジャガイモ育てるところが私は好きでした(笑)
まとめ
【大学】
分野にもよるが、国立大学が有利(特に東大)
【専攻分野】
現状、航空工学、機械工学、医学、化学などが多い。
海外に目を転じると、生物学、植物学、天文学を専攻にした方もいる。
※上記に挙げた大学、専攻分野はこれまでのトレンドであって、今後はもっと幅広い分野に広がっていく可能性がある。
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