社会人から宇宙を学びに大学院へ

社会人3年目を迎えた今年、私は大きな決断をしました。

社会人を辞めて、宇宙の研究をするために大学院に進学することを決めたのです。この決断に至るまでにはかなりの葛藤がありましたし、周りの方からの反対の声もありました。まだ、研究生活が始まっていないので、後々振り返ってみてこの決断が正しかったのかはわからないですが、それでも後悔しない選択をできたのではないかと今は思っています。

この記事を読んでくださっている方の中にも、夢を追いかけ社会人から大学院に進学したいと思っている人もいるかもしれません。なので、今回の記事では社会人から大学院進学を決断した過程や社会人から大学院進学するメリット・デメリットなどについて書いていこうと思います。

なぜ社会人を辞めてまで大学院進学したいのか?

私には昔からある夢がありました。それは「宇宙関係の研究者になりたい」というもの。

ただ、最初から研究者になりたいと思っていたわけではなく、初めは図書館にあった図鑑に出てくる土星の写真を見て、「こんなものが本当に存在するのか?」「なんで丸いのか?」「この輪っかは何でできているのか?」「なんで周りは真っ黒なのか?」というごく素朴な疑問を抱きながらその不思議を楽しむ少年でした。

しかし、高校生〜大学生ごろからある程度の天文学や地球科学の知識を身につけていく中で、もっと専門的に太陽系惑星について勉強したいという気持ちが強くなっていきました。そして、勉強すればするほどわからない部分が出てきてそれを一つ一つ理解していくのが楽しいと感じていました。
しかし一方で、勉強すればするほど、セミナーにいけば行くほど、自分は周りの人より研究能力がないなと痛感させられました。

「本当に自分は研究者になれるのだろうか?このままでは大学院に行ったとしても、修士号だけもらって研究室の推薦で就職して終わってしまうのではないか!?それなら、2年間大学に残るより早めに宇宙関連の企業に就職して、実務的なスキルを身につけた方が将来のためになるのではないか?」

このような考えから、今まで当然だと考えていた大学院進学をやめ、宇宙関連企業への就職をすることにしました。(この決断に関しては全く後悔していません)
自分の夢とは少し違うけどやりたい分野は同じだし、会社自体はとても居心地がいい。本当に申し分ない。
しかし、2年くらい働いてこんなことを思うようになります。

「自分ってなんで宇宙にこだわってきたのだろうか? 」

私が宇宙に魅力を感じたのは、宇宙がロマンチックで謎に包まれていて、それがどうなっているのかを解き明かしたい、知りたいと思わせる存在だったからです。しかし会社では営業がとってきてくれた仕事通りにプログラムを作ったり、文書を書いたり、宇宙の「なぜ?」を探求する機会は皆無でした。もちろん、これらの仕事も宇宙には関わっているし、確実に必要なものです。だから、私も誇りを持って業務を全うしています。

しかし、宇宙の「なぜ?」「どうして?」を追求することは今の会社ではできない。決して、会社に不満があるのではありません。自分のやりたいことは何かを1ヶ月近く考え悩んだ末、やはりこれがやりたいと思った先が研究者になって宇宙の研究をしたいということだったのです。

それを達成するための手段として大学院で研究・勉強をすることが必要だと感じました。
「社会人をやりながら大学院行けば、お金ももらえるし勉強もできるじゃん」とも言われました。でも、私はより多くの時間を研究に費やしたい、そして、勉強をしにいくのではなく、研究をして研究者になるために大学院に行きたい。大学院に行くことは目的ではなく、あくまでも研究者になるための手段なのだという気持ちが強かったので、社会人を辞めて大学院進学することにしました。

周りの反応

社会人を辞めて大学院進学したいと周りの人に伝えた時の反応は本当にまちまちでした。

両親の場合

両親にはプレゼン資料を用意し、どのような研究をしたくて、その研究が将来どのように役立つのか、就職するポストはあるのか、経済面はどうするのかなどを説明しました。
その甲斐あってか、「途中で投げ出すなよ」の一言だけでその他は前向きな反応をしてもらいました。これは自分にとってとてもほっとしました。

ただ、やっぱり経済面は心配されましたね。私の場合は、奨学金とRAによる給料がもらえることを説明して説得しました。

会社の上司の場合

一方、会社の上司には渋られました。その方は社会人ドクターの経験がある方なので博士課程の厳しさがよくわかっているのでしょう。
「君の行いたい惑星科学の分野は出口が狭いから苦労するよ」との忠告を受けました。実際そのようなアドバイスはとてもありがたくて、現実が厳しいのだということを客観的な視点で言ってくれる人は本当に大事だと思います。

その人には最後まで社会人ドクターで行くことを強く勧められましたが、研究に全力で集中したいという理由で押し切りました。

学部時代の教授の場合

学部時代の教授に報告するのが、一番緊張しました。現在の会社に推薦状を書いてくれた人ですし、大学と会社のパイプを考えると怒られるだろうなと思って相談に行ったら、けろっとした顔で「いいんじゃないか?」と言われました。もともと大学院に進んで欲しかったらしく、逆に嬉しいと言われました。

ただ、宇宙のサイエンスは就職先が少ないことは事実なので出口をどうするかを大学院一年目からしっかり考えて過ごすように言われました。(確かに重要)
一方で私が気にしていた年齢の部分においては、「博士号をとるつもりならある程度の遅れは問題ない。むしろ社会人経験しているのだからプラスなのでは?」と言っていただき少しほっとしました。

社会人から大学院進学するメリット

社会人から大学院進学するメリットとしては、次のようなことがあると感じています。

①自分の行いたい研究に全力投球できる

これは言わずもがなですけど、これまで仕事に当てていた時間を全て自分のやりたい研究に費やすことができます。研究において時間というのは非常に重要なファクターですし、私もこれを一番大きいメリットにあげたいと思います。

②社会人時代に稼いだお金で自己投資ができる

社会人で3年間お金を稼いだので、そのお金を使って例えば参考書を買ったり、スペックの良いパソコンを買えたり、自己投資の幅が増えます。まあ、今後のことを考えれば、節約することも必要ですけどね…

③社会人時代のスキルを生かすことができる

私の場合は宇宙業界で働いているので、学生ではわからないような宇宙業界の深い部分を知ることができました。
また、衛星運用や国際調整のスキルなどストレートで大学院に上がってきた人が持っていないようなスキルを持っていることはメリットだと思います。

④モチベーション高く研究できる(ような気がする)

一般的に大学院に進学する人は、学部からストレートで進学することが多いと思いますが、中には2年間学生を続けたいからとか社会に出たくないなどの理由で大学院に進学する人もいます。
一方、一度社会人経験をしてそれでも大学院に行きたいという人はある程度モチベーションが高いですし、博士まで行くんだという気持ちが強いと思うのでモチベーションの持続力もあると思います。

⑤社会人時代のコネクションが使える

私の場合、宇宙関連の会社で働いているので、退職したとしてもどこかの場面で共同研究したりする場面も出てきます。そのような時、相手が顔見知りというのはとても心強いですし、プロジェクトを円滑に進める要因になります。

社会人から大学院進学するデメリット

社会人から大学院進学するデメリットとしては、次のようなことがあると感じています。

①就職先が少ない

これはよく言われることで、博士課程まで行くと年齢も高くなるし、せっかく専門性が身についたのに一般的な就職をしたくないなどのプライドが邪魔して、一般企業への就職がしにくいケースも少なくないと聞きます。
特に、宇宙科学の分野は研究者の人数自体が少なく、世代交代もほとんどないのでポストが開かないという事態になっています。やはりこれが一番ネックとなる問題ですね。

②年齢という壁

社会人を辞めて大学院に入るとなると、ストレートで入ってきた人との年齢差ができてしまいます。一般的にストレートで博士号を取得する年齢は27歳ですから、社会人経験年数分が27に加算されていきます。
また、博士号取得後に多くの人が通るであろうポスドクの採用には年齢制限が設けられているものも多く、35歳というところが多いらしいです。(本当のところはわからないです)

また、やはり周りの目も気になります。「いい歳してまだ学生なの?」「その歳して任期付き研究員?」など言われると少し残念な気持ちになりそうです。

③経済面

これまで社会人としてある程度の稼ぎがあった状態から、収入0になるのはやはり大きなデメリットですね。もちろん、大学によってはRAや支援制度があるところもありますが、授業料や学会の交通費を自己負担しなければならない場合は結構痛いですね。

最後に

まあ、こんなにいろいろと書いてきたわけですが、正直4,5年後自分がどうなっているのか不安もあります。
でも、とりあえずこのような決断をした自分に自信を持ち、不安を感じている時間すらももったいないと思うくらい必死に勉強をしようと思います。
「その毎日の積み重ねが将来の自分を作ると信じて!!」

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