【2020年版】総研大宇宙科学専攻合格体験記

総研大とは

総研大とは総合研究大学院大学の略称です。この大学には学部は存在せず、大学院からの入学となります。また、この大学は研究者の育成を目指すため、学部卒の人は5年一貫、修士卒の人は3年次編入が求められ、博士課程への進学が必須となります。(例外はありますが…)

総研大の一番の特徴は日本の研究機関(JAXA, 国立天文台, 極地研究所など)が持つ実験・観測施設を使用した研究が可能な点です。また、それらの研究機関に所属する教授陣に指導いただけるため、最先端の研究情報や海外との共同研究の機会も多いかもしれません。
今回私が受験した学科は物理科学研究科宇宙科学専攻ですが、その他にも文系理系問わず幅広い専攻があるので興味のある方は、総研大公式HPをご覧ください。→https://www.soken.ac.jp

宇宙科学専攻とは

総研大宇宙科学専攻は、JAXA宇宙科学研究所を拠点として研究を行います。研究できる分野は、宇宙理学、宇宙工学を問わず、観測や実験、理論系と幅広く行われています。
JAXAという日本の宇宙開発を先導する研究機関で研究できるということはやはり夢がありますし、宇宙関係の情報が集まりやすいです。そのような最先端で研究ができることはメリットだと思います。
しかし、いくら幅広い研究が行われているといってもあなたの行いたい研究が行われているかどうかはしっかりチェックしておいてください。JAXAへの憧れだけで入るのはやめたほうがいいと思います。研究内容については総研大宇宙科学専攻公式HPの教員紹介ページをご覧ください。→http://www.isas.jaxa.jp/sokendai/about/staff/

とここまで長々と書きましたが、おそらくこの記事を読んでくれている方は総研大宇宙科学専攻の受験を考えている方でしょうから「そんなこと知ってるよ。早く合格体験記を聞かせろ」と思っていると思うのでそろそろ始めます。

総研大宇宙科学専攻の院試

筆記試験問題の傾向

総研大宇宙科学専攻の筆記試験は以下の2科目です。

総研大宇宙科学専攻の筆記試験科目
数学(90分): 微分積分・代数幾何を踏まえた設問を合計2題
物理(90分): 古典力学・電磁気学を踏まえた設問を合計2題

現在は2016〜2020年の4年間分の過去問がこちらに掲載されています。解かなくていいので、ざっと4年分見てもらうと数学に関しては毎回似たような傾向があることが分かります。特に、線形代数(固有値・固有ベクトル系)、微積の基礎問題などが毎年出題されています。実際、私が受験した2020年にも固有値を求める問題、微積の基礎問題共に出題されていましたので、この辺は重点的に勉強する必要がありそうです。

しかし、2020年は過去4年と大きく傾向が変わった点がありました。それがこちらです。

・問題数が圧倒的に多くなった。
・大問1にこれまで全く出てこなかった線形写像の問題が出た。
・微積の基礎問題がめちゃくちゃ簡単になった。

初めに大問1を見たときは、「終わった」と思いました。これまでの過去問の傾向を見て、線型写像の対策は不要と思い込んでいたためです。実際、この問題については全く何も回答しませんでした。本当に白紙です。笑
しかし、大問2,3,4はこれまでの傾向と大きく異なる問題はなく、落ち着いて解けば十分合格点に達するくらいのレベルだったと思います。特に、大問3に出題された微積の基礎問題10連発はおそらく30/100を占めていたと思うので、いかに基礎を落とさず得点を重ねられるかが問われた試験だったということです。
ただ、やはり2020年の試験の平均点は低かったでしょうね。

物理に関しては毎年同じような問題が出るわけではありませんが、大きくみれば力学の1問、電磁気1門が出題され、それぞれ前半は基礎問題、後半はやや応用問題という構成になっています。物理は年によってかなり難易度が変化する感じがします。また、力学、電磁気と言ってもかなり広い範囲から満遍なく出題される傾向なので、山を張ることはしないほうがいいと思います。
2020年の試験では、力学では探査機の地球離脱速度の計算や月での運動力学の問題が出ましたが、どれも教科書レベルの基礎的な問題でした。一方、電磁気学のほうは、サイクロトロン運動の問題が出ていました。これに関しては、一般的な電磁気をきっちり理解していれば解ける問題だと思いますが、初見の人は焦ったのではないかと思います(私です…)

院試の難易度

総研大宇宙科学専攻の筆記試験の難易度についてですが、客観的に見てそこまで難しいとは言えません。例えば、総研大の天文学科や東大などの試験問題と比較すると、基礎的な問題が多く難易度としては易しい部類に入ると思います。出題範囲も数学で言えばフーリエ変換や複素関数、物理で言えば統計力学、量子力学など難しい分野からの出題がないので対策自体は難しくないでしょう。
しかし、かといって全く対策をしないで受かるほど甘くもないので、しっかり対策をしてのぞみましょう。

私が行った試験対策については、以下の記事にまとめましたので、興味のある方は参考にしてください。(現在作成中です。しばしお待ちを!!)

面接対策・聞かれた質問

総研大宇宙科学専攻の試験には面接があります。全体の面接時間は15分(発表時間5分+質疑応答10分)です。
私の感覚ですが、試験全体の得点比率としては、筆記:面接=7:3と言ったところだと思います。だからと言って、面接対策を疎かにしていいわけではありません。もちろん筆記試験で満点近く取れるのであれば、面接対策しなくても全然合格できると思います。しかし、筆記試験がボーダーギリギリか少し下の場合はこの面接の印象が大きく影響します。

面接で見られている部分は以下のような点です。

・話の論理が破綻していないか
・自分の将来像を描けているか
・資料が論理的に書けているか

本番では5分という短い時間の中で、自分のやりたい研究について説明しなければなりません。そうなると論理の飛躍が起きたり、単に自分がやりたいことだけを述べるような発表になる場合があります。これまでの先行研究の背景を踏まえ、自分が行いたい研究がどのようなメリットがあり、今後の宇宙開発や人類にどのように貢献しうるかというところまできちんと論理立てて説明できると良いと思います。

また、面接をする際、面接用の発表資料として以下の3つを提出することになります。
・プレゼン資料(powerpoint)
・プレゼン要約資料(word)
・志望理由書(word)

これらそれぞれの資料も合否に大きく影響すると思います。それぞれ論理構成をしっかり熟考して書くことをお勧めします。私の場合、それぞれの資料を最低5回は書き直しました。これらの資料を論理的に書くという能力は、今後の論文の要旨を書く能力を見極めるのに使われるようなので、しっかり対策して作れば研究者としての自分の適性をアピールできます。
では、どのようにこれらの資料を作っていくのがいいのでしょうか?私が意識していたのは、以下の点です。

・論文調査を行い、何がわかっていて何がわかっていないのかを明確にする
・自分がやりたい研究がどの系譜の研究かを理解する
・その研究を通して、将来のキャリアパスを考える(現時点で)

受験者個人で行いたい研究内容が異なってくるので、具体的なアドバイスができず申し訳ないですが、各々上記に書いた点について自分のケースについて考えてみるといいと思います。ただし、面接対策や志望理由書の書き方に正解はありません。自分自身で試行錯誤して何回でも書き直すといいと思います。書き直すたびに自分の考えが洗礼されていくことが実感できると思います。

さてさて、実際の面接はどうだったかというと、コロナの影響でリモート面接になりました。これによって、資料を丸暗記しなくて良くなったのはとてもありがたかったですね。発表時間は5分と非常に短いので、ちょうど5分で発表が終われるように50回は練習しました。実際の面接でも4分58秒で終わることができました。これは練習すれば誰でもできることなので我慢してやったほうがいいです。一般的な学会で時間の超過はかなり嫌われます。面接官はJAXAの教授陣なので時間超過については厳しくチェックしていると思うので注意です。

そして面接の一番の関門が質疑応答です。
質疑応答はオンラインだということもあり、終始淡々と行われました。聞かれた質問としては主に次のようなこと。

・社会人を辞めてくるということだが、卒業後どのようなポジションで宇宙業界に貢献していく予定ですか?
・数値シミュレーションを行いたいということだが、現在までにそれに関連する経験はありますか?
・OOという研究をやりたいということですが、それに対しての具体的なアプローチはどういったものを想定していますか?(例えば、データ解析、理論研究、実験、機器開発など)
・昨日の試験の出来と反省点について述べてください。
・学生時代の研究やこれまでの社会人としての業務の中で、これからの研究に生かしていけるスキルはありますか?
・総研大以外にどこか大学院を併願していますか?
・行いたい研究に使用するデータは使用できることを指導教員と話し合いましたか?

私の場合は、質疑応答の対策もかなり行いました。具体的には想定問題を60問ほど考え、それに対する答えを用意し、指導教員の方に添削してもらいました。正直、自分が想定していた質問以上に鋭い質問はなくスムーズに面接を終えられた印象ですが、去年受けた先輩に聞くと「その研究意味あるの?」などの意地悪な質問もされたそうなので、自分の行いたい研究についてはしっかり意見を言えるようにしておいたほうが良さそうです。
自分の場合、社会人をやめて大学院進学を目指すという特殊なケースだったので、聞かれた質問に関しては一般の受験生に当てはまるかはわかりませんが、参考になれば嬉しいです。

総研大宇宙科学専攻を受験する上で絶対やっておいた方がいいこと

総研大宇宙科学専攻を受験する上で絶対やっておいた方がいいこと…
それはずばり、指導教員と密に連絡を取る。必要によっては、提出書類の添削をお願いするということです。
大学院入試において、志望する教員に事前にアポを取って、自分の行いたいけ研究ができるのか、その研究室ではどのような研究を行っているのかなどを確認することは多くの受験生が行っていると思います。
しかし、ほとんどの人がここで終わっています。その先、指導教員の方と研究の方針をしっかりすり合わせ、提出書類の添削や作り込みを行っておくことが重要だと思います。もちろん、先生方も本職がありますので忙しい時は相手をしてくれないかもしれませんし、こちらも依頼をためらうときもあるかもしれません。しかし、私は総研大宇宙科学専攻を受ける中で5人の先生にアポをとってお話しさせてもらいましたが、みな学生のことを考え「このように研究してはどうか?」、「その研究なら〇〇先生のほうがいいかも」など有益な意見をくださいました。そして、最終的に指導教員に選んだ先生には提出書類を細かく添削してもらい、4回も面接練習に付き合ってもらいました。それだけ親身になってくれる先生方なので、自分から添削や面接時の想定質問などを聞いてみるといいと思います。

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